近年の健康ブームの影響で、中性脂肪やコレステロールの数値を意識する人が増えてきました。それに伴って青魚の健康効果が注目され、テレビ、書籍、ネットなどでEPA、DHA、オメガ3…といった単語を日常的に目にするようになりました。これらの成分が配合されたサプリメントも店頭にたくさん並んでいますよね。

たくさんの缶詰めに「DHA」の文字が記されていますよね
ところで、皆さんはEPA、DHA、オメガ3について詳しくご存知でしょうか?
「青魚に多く含まれている成分」というのは有名ですが、具体的にはどんな働きをしているのか気になるところですよね。ここでは、オメガ3脂肪酸のEPAとDHAについて詳しくご紹介します。
タイトル
EPAとDHAの効果|そもそも両者はナニモノなの!?

EPAとDHAは脂質の主成分である脂肪酸
EPAとDHAは脂質の主成分である脂肪酸です。脂肪酸はバター、ラード、植物油などの油脂類に含まれますが、穀類、豆類、魚介類、肉類などにも多く含まれています。

実際、2015年度の厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」では、脂質の総エネルギーに占める割合の目標値を20~30%(1歳以上)に設定しています。つまり、国を挙げて「脂質も適度に摂取しましょう!」ということを推奨しているのです。
脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸がある

脂肪酸には、上図のように大きく分けてラードやバターなどの飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。これは炭素、水素、酸素からできている結合のしかたで種類が変わってきますが…難しいことはさておき、ここでは簡単にご説明しますね。

体内で糖質と脂質から合成されます。コレステロールと中性脂肪を増やし、血液の流れを悪くします。ラード、バター、肉の脂身などに多く含まれ、摂り過ぎてはいけない脂肪酸です。

不飽和脂肪酸は2つに分類されます。体内で合成できる単価不飽和脂肪酸(n-9系脂肪酸)と合成できない多価不飽和脂肪酸に分かれます。
前者のn-9系脂肪酸で知られているオレイン酸は、コレステロール値を減らし、腸の蠕動運動を高めるとして知られています。オレイン酸に代表されるのがオリーブオイルやナッツ類で動脈硬化などを予防するとして知られていますが、過剰摂取するとカロリーオーバーになるため注意が必要です。
後者の多価不飽和脂肪酸はさらに2つに分類されます。n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸(またの名をω-3脂肪酸)。この後者が「オメガ3」と呼ばれている脂肪酸です。
多価不飽和脂肪酸をさらに詳しく!
n-6系脂肪酸とオメガ3はいずれも必須脂肪酸と呼ばれ、体内で合成されないため、食品から摂取しなければなりません。
n-6系脂肪酸にはリノール酸があり、コレステロール値を下げる働きとして知られていますが、過剰摂取でアレルギーの可能性が疑われています。これは、リノール酸から合成されるアラキドン酸にアレルギー症状を強める作用があるためで、花粉症やアトピー性皮膚炎などの原因のひとつとされています。
n-3系脂肪酸(オメガ3)にはα-リノレン酸があり、これは体内でEPAやDHAを合成します。また、血圧を下げ、血液の流れをよくする作用があり、積極的に摂るのがよいと考えられています。


このn-3系脂肪酸(オメガ3)が豊富に含まれているからです。
どのぐらい摂取したらいいの?
EPAとDHAのそれぞれの働きは後述するとして、上記の脂肪酸は一日にどれくらい摂取したらいいのでしょうか?

再び、上記で使用した図を用いますが、赤い旗&ニコちゃんマークがあるのはお分かりですか? あえて3つを目立つように示しました。
- 飽和脂肪酸
- 単価不飽和脂肪酸
- 多価不飽和脂肪酸(n-6系脂肪酸とオメガ3)
先述した厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」には、「どのくらい摂取したらいいの?」という事も示されています。
- 飽和脂肪酸 18歳以上の男女で7%
- 単価不飽和脂肪酸 30歳以上69歳以下の男性で一日10g、女性で8g
- 多価不飽和脂肪酸(n-6系脂肪酸とオメガ3) 30-49歳の男性で一日2.1g、女性で1.6g、50-69歳の男性で一日2.4g、女性で2.0g

EPAとDHAの違い(1)|EPAは血液サラサラを実現!

EPA(エイコサペンタエン酸)の働き
EPAは、エイコサペンタエン酸のことで、オメガ3と呼ばれるn-3系列の多価不飽和脂肪酸です。国際的にはIPAの呼び名で知られています。
えごま油やあまに油など、α-リノレン酸が含まれている食品を摂取すると体内でEPAに替わります。EPAは血小板の凝縮を抑制し、血栓を溶解させ、血管を拡張させます。また、悪玉LDLコレステロールや中性脂肪を減らし、善玉HDLコレステロール値を増やす働きをします。
EPAは血液やアレルギーに対して働くため、不足すると血液が凝固しやすくなり、動脈硬化が起こりやすくなります。また、血圧が上がり、中性脂肪や悪玉LDLコレステロール値が増え、アレルギーが発生しやすくなる症状も見られます。
EPAを多く含む食品

イワシのお刺身。安価ですし、どこのスーパーでも手に入りやすいのでおすすめ
EPAは魚の脂肪分に多く含まれている成分のため、脂肪の多い魚に多く含まれます。
- はまち
- きんき
- まいわし
- にしん
- ほんまぐろ
- さば
- まだい
- ぶりなど
これら青魚の食べ方ですが、「脂肪を逃がさないほうがいい」という観点から、刺身が最良の摂取方法と言われています。高温で加熱する揚げ物は好ましくありませんが、煮物は煮汁と一緒に食べればよりEPAを摂取できます。缶詰の魚も含有量が多いのでオススメです。

EPAとDHAの違い(2)|DHAは脳の栄養素!

DHA(ドコサヘキサエン酸)の働きは
DHAはドコサヘキサエン酸のことで、EPAと同じくn-3系の多価不飽和脂肪酸です。α-リノレン酸さんを含む食品を摂取すると、体内でEPAを経て合成されます。EPAと同様に青魚の脂に多く含まれています。
悪玉LDLコレステロール値を下げ、善玉HDLコレステロール値を増やすほか、中性脂肪を低下させ、脳や神経組織の機能に関わっています。
DHAは脳や神経組織に多く含まれているため、不足すると記憶力や学習力が低下すると言われています。血圧が上昇し、血小板が凝縮するため、血栓ができやすくなり、コレステロールや中性脂肪が増えるなどの症状が出るようになります。
DHAを多く含む食品

「青魚の刺身」というカテゴリーならしめさばも外せない人気
- まぐろ
- まだい
- ぶり
- さば
- はまち
- うなぎの蒲焼
- きんき
- さんま
- まいわしなど
DHAもEPAと同じように、刺身で食べた方がよいのですが、缶詰でも十分。無理せず日頃の食生活に摂り入れることができます。
【まとめ】
EPAやDHAは体に必要な脂肪酸です。
- いわし
- さば
- ぶり
- まだい
- まぐろ
この4つの魚は両者が豊富に含まれているので特におすすめ。血液やコレステロール、中性脂肪に好影響を与えるはずです。刺身が最も摂取しやすいですが、缶詰めでも十分に栄養が摂れます。日々の生活に摂り入れていきたいですね。