梅雨が明けた頃になると、どこのスーパーでも「土用の丑」と書かれたのぼりを掲げて、魚売り場や特設コーナーにはたくさんのうなぎの蒲焼が並びます。
土用の丑の日にうなぎを食べる――。
この風習があるのは皆さんご存知ですよね。でも、「なぜ土用の丑の日にうなぎを食べるのか」についてバシッと解説できる人は少ないのではないでしょうか。「行事食」という視点で見れば、お正月のおせち料理やクリスマスのケーキ、節分の恵方巻より一歩も二歩も遅れをとっているような……そんな感じがしませんか。
ここでは「土用の丑の日」とはそもそも何なのか? なぜうなぎを食べるのか? はたまた、なぜその時期のうなぎは値段が高騰するのか? など、土用の丑の日の関するエトセトラをご紹介します。
タイトル
2018年の「土用の丑の日」はいつ?

2018年の土用の丑の日が2日もある!? 毎年違うの?
昨年、2017年の「土用の丑の日」は「7月25日」と「8月6日」の2回ありました。ちなみに、2016年は「7月30日」の1回だけ。だいたい2年に一度くらいの割り合いで2回ある年がありますが、2018年の「土用の丑の日」は「7月20日」と「8月1日」の2回です。
そもそも、土用の丑の日とは!?
まずは「土用の丑の日」にはそもそもどんな意味があるのか見て行きましょう。
あらためて見てみると、「土用」と「丑」って難しい言葉ですよね。「どよう」と「うし」と読みますが、どちらも日常的に使う言葉ではありませんよね。筆者は「丑」をそらで書ける自信がありません(笑)。
土用
さて、まず土用という言葉ですが、四立(立春、立夏、立秋、立冬)の前の18日間(または19日間)のことを言います。
- 立春(2月3日~5日)の前の18日間:1月17日~2月3日頃
- 立夏(5月4日~6日)の前の18日間:4月17日~5月4日頃
- 立秋(8月6日~8日)の前の18日間:7月20日~8月6日頃
- 立冬(11月6日~8日)の前の18日間:10月20日~11月6日頃
つまり、「土用」は年に4回、各季節に存在するというわけです。
丑の日
次に丑の日の意味ですが、十二支の「子(ね)、丑(うし)、寅(とら)、兎(う)…」の丑のことです。十二支はもともと中国古来の陰陽五行説に基づくもので、年を数えるためだけでなく、方角や月、日にちを示すのにも使われています。あまり知られていませんが、一年365日のうちで、それぞれの干支は12日周期で巡ってきます。
たとえば、2018年7月と8月の「丑の日」は、下記の5日間です。
- 7月8日、20日
- 8月1日、13日、25日
では、なぜ夏の「土用の丑の日」にしかうなぎを食べないのか――については下記でご説明します。
なぜ土用の丑の日にうなぎを食べるの? 起源は江戸時代?

江戸時代の博物学者である平賀源内はご存知でしょうか。エレキテル(摩擦起電器)を発明した偉人です。
江戸時代にまで話はさかのぼります。
あるとき、うなぎ屋の主人が「うなぎが売れなくて困っている」と平賀源内に相談したところ、源内が「本日“丑の日”と、店に張り紙をしてみろ」と提案したそうです。するとその張り紙が功を奏して、うなぎの売れ行きが好調になった――という話がありました。
他のうなぎ屋もそれを真似するようになり、丑の日にはうなぎを食べるという風習が定着していったと言われています。
なぜ、夏場の土用(立秋の前)にしか食べないの?

先ほど、土用の丑の日は四季すべてに存在することを説明しました。それなのに、どうして夏の土用の丑の日だけしかうなぎを食べないのでしょうか?
これは、「平賀源内がうなぎ屋に提案したのが夏の土用の丑の日だった」ということと、その背景に、「夏にうなぎは売れない」という定説があったためです。
本来、うなぎの旬は冬です。「夏のうなぎは美味しくない」と言われ、あまり売れなかったそうですが平賀源内の発案により、夏にうなぎの売れ行きが伸びるという不思議な現象が起きました。また、当時は「丑の日に“う”の付く物を食べると暑い夏を健康に乗り切れる」と信じられていたこともあり、源内はその点を突いて、あのような発案をしたのだともいわれています。
これが、夏の土用の丑の日だけにうなぎが食べられるようになった由来です。
土用の丑の日はうなぎの価格が高騰している印象。そのワケは?

四万十川のうなぎ。国産でしかも天然のうなぎはとても希少だ
1年のうちで最もうなぎが売れる夏の土用の丑の日。商売人にとっては売り上げを伸ばすための絶好のチャンスですが、一方、消費者としてはこの時期になるとうなぎの値段が高騰するような印象が……。実際に値段は高くなっているのでしょうか?
実際には値上げをして販売する店は少なく、スーパーでは普段よりも質の高いうなぎを店頭にならべることがよくあるようです。普段は中国産をメインに販売しているのが、土用の丑の日には国産うなぎを多く仕入れて販売している店が多いようです。中国産に比べると、国産のほうはどうしても価格が高くなってしまいます。
これが実状でしょう。
国産うなぎの99%が養殖ですが、国内でとれる稚魚の量が年々減少していき、この60年間で約200tから15tにまで落ち込んだといいます。うなぎの大幅な値上がりは仕方のないことと言えそうですね。
海外から稚魚を輸入する方法もありますが、資源管理のために養殖量に規制が設けられている国が多く、国内生産量と輸入の分を合わせても、以前のような供給量には程遠いといいます。現在、国を挙げて、うなぎの稚魚を安定生産できる技術を開発中です。東京オリンピックが開催される2020年までには、卵からの完全養殖の商業化を目指しているところです。
土用の丑の日に食べるうなぎ以外の食べ物は?

梅干しも体力回復にはもってこいの食べ物
夏には好んで「う」が付く食べ物を好んでいた!?
筆者は「値段が高い」という理由でうなぎを食べなかった年もありましたが、そもそも土用の丑の日だからといって、「うなぎを食べなければいけないの?」と考える人もいるでしょう。大切なのは、「夏本番に備えてスタミナをつけよう!」ということなので、うなぎ以外の食べ物でもいっこうに構わないわけです。
たとえば、うな丼をやめてカルビ丼を食べてもいいわけです。それでもじゅうぶんスタミナは付くと思います。うなぎの蒲焼の代わりにアナゴやサンマを焼いて、それにうな重のタレをかけて食べた、という話を聞いたこともあります。
また、江戸時代には夏に〝う〟の付くものを好んで食べていたという話をしましたが、実際に、梅干し、うどん、きゅうり(うり)、馬肉(うまにく)、牛肉(うしにく)などが食べられていたといいます。これらの食材も体力増進、疲労回復といった効果が期待できそうですよね。他にも、「土用餅」「土用しじみ」「土用卵」といったものが地方によっては食べられているそうです。
土用の丑の日まとめ
うなぎの価格高騰を受け、全国各地でたくさんのうなぎ屋が廃業に追い込まれているといいます。都内で65年続く老舗の有名店までもが、やむなく暖簾を下ろしました。
以前デパートで、国産うなぎの蒲焼が6000円となっているのを見て驚きました。30年前、近所のうなぎ屋では、大きさによって500円~1500円という設定でした。それを考えると、現在は驚くほどの価格になっていますよね。
それでもスーパーで「土用の丑」ののぼりを見ると、やっぱりうなぎが食べたくなります。2018年の「土用の丑の日」は7月20日と8月1日。「暑い夏を乗り切れるように」と願いながら、夏の行事食を満喫したいものです。
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